トレーサビリティ(トレサビ)とは?3つの手法と成功事例
万が一、商品に不具合やトラブルがあった際、原因を特定したり対策を打つために必要なトレーサビリティ。
仕組みを確保していないと、不具合やトラブルが発生した際に迅速な対応ができず、消費者から信頼を失ってしまうことにもなりかねません。
しかしトレーサビリティの導入にはデメリットもあるため、導入に頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
本記事では製造業の代表的なトレーサビリティの3つの手法と、デメリットを抑えたトレーサビリティの実施事例を紹介します。
トレーサビリティについて改めて理解を深め、デメリットを抑えた上で導入できれば、より品質の高い製品の製造や、不備があった際の対策が迅速にできるようになるでしょう。
トレーサビリティとは?
トレーサビリティ(略称:トレサビ)とは、
「いつ、どこで、誰が作ったのか?」を明らかにすることによって、製品に欠陥などの問題が生じた際、早期に原因を追究し、対象となる製品の回収を迅速に行う仕組みのことです。
製造業ではよく使われる「トレーサビリティ」という言葉。
一般的に認知されたきっかけは、BSE問題の発生だと言われています。
BSE問題は2001年に国産牛肉、2003年にアメリカ産牛肉で発生しました。
BSE問題により食の安全性が脅かされ、規格や法規制が急速に整備されたのです。
このことが発端で食品業界をはじめ、他の業界にもトレーサビリティを導入する動きが広まり、製造業も当然その影響を受けています。
昨今では品評偽装の防止やリコール回収の迅速化のために多くの企業がトレーサビリティを導入しています。
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それでは、改めて、トレーサビリティの3つの手法を紹介してまいります。
トレースバック
トレースバックとは、出荷済みの製品に不具合があった際に、原因箇所から影響範囲を探る方法です。
製品に不具合があることが発覚したら、影響があるロットや工程、作業者を特定します。
原因の追跡ができれば、搬入されたロットに不具合があったのか、工程や作業内容に問題があったのかなど、何に問題があったのかを特定することができます。
その結果、再発防止や品質の向上につながります。
トレースフォワード
トレースフォワードとは、特定の部材などに問題があった際に、その部材が使用された製品、在庫など影響される製品をピンポイントで特定することです。
リコール製品を迅速に特定しなくてはいけない際に、トレースフォワードが大きな効果を発揮します。
また、問題部材を利用した中間品などが工場内に残っている場合、該当在庫を利用停止にする処置も可能となります。
グローバルトレーサビリティ
グローバルトレーサビリティとは、工程間やライン間などの工場内部だけでなく、複数の工場間での情報伝達を軸にしたトレーサビリティのことです。
昨今では、1つの製品を作るのに複数の工場を跨ぐ製品が多く、別の工場や、場合によっては海外工場の情報まで、伝達や管理をする重要性が非常に高まっています。
特に最近では新型コロナウィルスにより、サプライチェーンが分断されました。
製品の原材料の調達、製造、出荷、不備があった場合の回収までの流れが断たれたのです。
各工場の進捗、在庫、作業者などの情報が素早く取得できないことにより混乱が生じ、製造ラインの停止という状況に陥ったことは、記憶に新しいでしょう。
このような事態に対応するために、グローバルトレーサビリティが再び重要視されています。
トレーサビリティのデメリット
トレーサビリティは「不備のあった製品の原因と影響を特定する」というメリットが多く、製造過程の管理のためには不可欠ですが、一方でデメリットもあります。
管理を厳密に行う場合の手法として、例えば
- 部材や中間品をロット、シリアル管理する
- QRコードラベルを貼付してハンディで読み込み、組付けをする
などの方法があります。
厳密な管理を行う場合は当然、作業工数は増加します。
作業工数の増加は、
- 製造リードタイムの増加
- 作業者の身体的、精神的な負担
というデメリットを発生させます。
ですから、トレーサビリティを導入する際は、メリットとデメリットのバランスをとることが非常に重要なのです。
バランスをとるためには、作業工数をいかに小さくして現場に受け入れてもらうかが大切です。
トレーサビリティ導入のデメリットを抑えるには
上記の通り厳密なトレーサビリティは製造業の品質管理において必要不可欠です。
しかし製造リードタイムの増加で価格が上がり、製品価値の減少があってはいけません。
とはいえ、安全性の低下は本末転倒です。
つまり、トレーサビリティの導入は、メリットとデメリットのバランスをいかにとるかが重要です。
参考までにトレーサビリティの導入によるデメリットを抑える手法を1つ紹介します。
とある製造業の企業では、全ての部材を厳密に管理するのではなく、「単価が高い部材」や「重要保安部品」など、影響が高い部材に絞ってトレーサビリティを構築しました。
対象をピンポイント絞ってトレーサビリティを構築することで、デメリットを最小限に抑えたケースです。
このようにトレーサビリティは、品質、コスト、安全性、信頼性などのバランスを考慮して構築しなければなりません。
さいごに
製品の安全性を担保するためには、トレーサビリティは必要不可欠です。
しかし、デメリットもあるため、バランスを上手にとる必要があります。
今回ご紹介した、3つの手法とデメリットを抑えた事例で、安全で低コストな工場運営のご参考になさって頂ければ幸いです。
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