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MES導入でトレーサビリティ強化!導入前に押さえておきたい注意点と課題

組立製造業において、MES(製造実行システム)を活用したトレーサビリティ強化は、品質向上やリスク管理の観点から非常に有効です。

前回の記事では、MESによるトレーサビリティの具体的な実践例をご紹介しました。

→→MESでトレーサビリティを実現する方法とは?

今回は、MES導入を成功させるために、あらかじめ理解しておくべき3つの注意点と4つの課題について詳しく解説します。

MES導入で注意すべき3つのポイント

MES導入を成功させるには、技術面と教育面の両方からのアプローチを準備することが求められます。

正確なデータをリアルタイムで確保できる仕組み

トレーサビリティを機能させるためには、正確なデータがリアルタイムにMESへ連携されることが大前提となります。

しかし、現場でのデータ入力漏れやミス、入力遅れはしばしば発生してしまいます。

作業者への教育を徹底し、作業手順書やチェックリストの整備、データ入力ルールの確立が重要です。

 

またデータ入力自体の負荷やヒューマンエラーを削減する仕組みづくりも重要です。

可能な限りバーコードやRFIDなどの自動認識技術を活用し、データを自動的に取得・連携する仕組みを構築することが効果的です。

ほかにも製造設備の制御システムやPLCなどとMESを直接連携させることで、ヒューマンエラーを排除し、データの正確性とリアルタイム性を更に向上させることができます。

また、製造工程や作業手順に無駄がないか、データ入力しやすい環境が整備されているかなど、製造工程や現場環境そのものを継続的に見直し、改善することも重要です。

現場の抵抗感への対応

現場作業者にとって、MES導入は従来の業務プロセスや作業方法の大きな変更を意味します。

そのため、新しいシステムや運用ルールへの抵抗感が生まれるのは、ある意味当然のことと言えるでしょう。

特にベテラン作業者ほど、長年慣れ親しんだ方法を変えることに抵抗を感じやすい傾向があります。

このような抵抗感を軽減するためには、導入初期段階から現場を巻き込み、MES導入の目的やメリットを丁寧に説明し、理解と共感を得ることが不可欠です。

現場の声を反映してシステムの使い勝手や運用ルールを整えることで、現場の当事者意識を高め導入をスムーズに進めることができます。

あわせて、トレーニングプログラムを充実させて操作方法やデータ入力ルール習得をサポートし、MESが現場負担の軽減と業務効率化に繋がることが実感できる体制を整えることが成功につながります。

データセキュリティ

MESには製品の製造履歴・品質情報・設備稼働状況など、企業の機密情報が大量に蓄積されます。

これらの情報が漏洩・改ざんされれば、企業の信頼失墜、経済的損失、法的責任問題など、深刻な事態を招きかねません。

そのため、MESには強固なデータセキュリティ対策が必須です。

具体的には、ユーザーID・パスワードによるアクセス制御だけでなく、役職や業務内容に応じたアクセス権限の設定、データの暗号化、不正アクセス検知システムの導入など、多層的なデータセキュリティ対策を講じることが重要です。

そして万が一のセキュリティインシデント発生時に備え、データバックアップと復旧計画を策定し、定期的な訓練を実施することで被害を最小限に抑えることができます。

このような仕組みの整備に加えて、従業員へのセキュリティ教育を徹底し、情報漏洩のリスクやセキュリティ対策の重要性に対する意識を高めることも欠かせません。

MES導入で直面しやすい4つの課題

MESを導入することで製造現場の可視化や効率化が期待されますが、実務面での課題も多く存在します。

これらを乗り越えるためには、現実的な運用設計と段階的な対応、そして社内外のリソースを活用した柔軟な体制づくりが欠かせません。

多品種少量生産への対応

多品種少量生産では、製品ごとに工程や管理項目が異なることが多くMESの設定や運用が複雑になりがちです。

そのため品種ごとに異なるマスターデータを柔軟かつ効率的に管理する仕組みが求められます。

さらに、製造するモノによっては膨大な数の部品を組み付ける必要があります。

この全ての部品にシリアルを発行・貼付したり、組付け前にデータ取得(スキャン)する運用工数が現実的でない等の問題も出てきます。

 

こういったケースでは、重要保安部品やコストが高い品目に限ってトレーサビリティ情報を取得・紐付けするなどの対応が多く見られます。

全ての部品を紐付けすれば良いという話ではなく、製品の特性、リスク、コスト、運用負荷などを総合的に判断し、最適なトレーサビリティレベルを検討することが重要です。 

レガシーシステムとの連携

多くの企業では、長年にわたり運用されてきた基幹システムや生産管理システムなどのレガシーシステムが存在します。

これらのレガシーシステムとMESを連携させるにはインターフェースの開発が不可欠です。

しかし多くの場合、連携開発は容易ではありません。

技術的な制約や、データ構造や通信プロトコルの違い、連携部分の仕様がブラックボックス化しているなどケースもあるためです。

そのため連携開発には、十分な調査と、場合によってはリバースエンジニアリングが必要となり、多くの工数とコストが発生する可能性があります。

そのため、データ連携は必要最低限に絞り、段階的に進めていく等の工夫が必要です。 

データ分析スキルの不足

MES導入により製造現場から様々なデータが収集できるようになります。

それらの収集データを有効活用するには、データを分析し、そこから傾向や課題を発見するスキルが求められます。

しかし、製造現場において、データ分析に精通した人材が製造現場に不足しているケースが多いのが実情です。

またータ分析を専門とする人材であっても、製造現場の業務知識がかけていれば有効な分析結果は難しいでしょう。

そのため、MES導入の効果を高めるためには

・データ分析スキル向上のための教育

・外部の専門家の活用

・製造現場へのデータサイエンティストを常駐

などの施策も検討する必要があります。 

変化への対応

製造業を取り巻く環境は絶えず変化しており、MESも一度導入すれば終わりというわけではありません。

新たな製品ラインの追加、製造プロセスの変更、新しい法規制などの変化に合わせて柔軟に改修・拡張していくことが求められます。

しかし、システム改修には相応のコストと時間が必要なため、迅速な対応が難しい場合もあります。

自社だけで改修を進めると、将来的な拡張性や保守性に問題が生じるリスクもあります。

システムベンダーとの密な連携体制を構築し、長期的な視点でMESを運用していくことが重要です。

まとめ

MES導入によるトレーサビリティ強化は、組立製造業に多くのメリットをもたらしますが、同時に注意すべき点や難しい点も存在します。

ポイントを十分に理解し、自社の状況に合わせた計画を立てることが成功への近道です。

特に、現場の理解と協力、継続的な改善活動がMES導入の効果を最大限に引き出す鍵となるでしょう。

これらの課題を乗り越え、トレーサビリティ強化を実現し、より競争力の高い製造現場を構築しましょう。

 

 

 

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