老舗企業の成長を支えるスムーズなアップグレード:Microsoft Dynamics 365導入事例
年商200億に成長した老舗企業の舞台裏
長野市で明治35年にこうや豆腐の製造販売で創業し、120年以上の歴史を誇る株式会社みすずコーポレーション。
諸説ありますが、こうや豆腐はその名の通り和歌山の高野山が発祥の地と云われ、信州を含めて冬の寒冷な気候を利用して、農家の副業として軒先に豆腐を吊るして、天然の製法で乾燥させて作っていました。
みすずコーポレーションの前身であるみすず豆腐株式会社は、季節性のある家内作業であったこうや豆腐作りの供給体制を工場でのオートメーション化により通年生産に切り替えた初めての会社です。
そのように作られた、こうや豆腐を大都市へ販売することで販路を拡大してきました。
さらに、味付け油あげの販売で業績を伸ばし、家庭用のいなり寿司用油あげで業界トップのシェアを誇っています。
現在は業務用の注文も増え、1日あたり約380万枚を生産しており、なんと年商は10年間で120億から200億へ!
業界のリーダーとしてさらに成長を続けています。
そこにはどんな仕組みがあったのでしょうか?
業務統括本部生産業務部部長の竹内聡さん、
主査の阿部沙季さんにお話を伺いました。
本社・工場 業務統括本部 生産業務部
(左から)古川 昌明さん、竹内聡さん、阿部沙季さん
営業と製造現場のコミュニケーションにデータを活用
――みすずコーポレーションさんが120年以上にわたって事業を拡大してこられたのは、
伝統を守るだけでなく、時代に即した変化を続けてこられたからではないかと思います。
どのような変革をしてこられたのでしょうか?
竹内 そうですね。毎年のように、新しいラインや工場ができるから来年こそは楽になると思いながら頑張っているのですけど、なかなか楽にならないのですよ(笑)。
どんどん受注が増えてまた生産量をあげないといけなくなってしまって。
ここまでの成長ができたのは、経営陣が将来を見据えて生産ラインの投資を行ってきた結果だと思います。
今では長野市内の生産拠点(本社工場・更北工場)だけでは生産が追いつかなくなり、山梨工場(山梨県笛吹市)と北アルプス大町工場(長野県大町市)といった遠隔地にも工場を増やしました。
特に北アルプス大町工場は油あげ、味付け油あげなどを手掛ける新拠点で、自動化や省力化、環境配慮などを重視した設備・機器を導入し、北アルプスの良質な水資源を利用して将来のニーズ拡大に向けた増産体制の整備と、拠点分散によるリスクヘッジを進めています。
成功するには投資の決断だけでなく、計画が結実するよう顧客目線で時代のニーズに合わせていくことが重要ですから、経営判断が鋭かったのだと思います。
――竹内さんは業務統括本部生産業務部の責任者でいらっしゃいますが、
どんな仕事を請け負っていらっしゃるのでしょうか?
竹内 業務統括本部は、生産業務部の他に購買部及び物流部・物流業務部を含めた4部門を統括する部署で、会社の経営資源や利益をコントロールしています。
その中で私が担当する生産業務部は主として営業部門と連携しながら販売計画に沿った各工場の生産計画を立案しています。
生産業務部は営業が作った販売計画を満たす製品在庫を用意するのが役割で、部員数は4名の少数精鋭の部隊です。
工場全体の生産活動をコントロールして有限な経営資源(人・物・金)を有効に使うことを見据えているので、時には部署を超えて人を動かすこともありますし、自分達が現場に出ることもあります。
なんでもやりますよ(笑)。
――現場にも出られるのですね。
多部門に渡る調整は難しいこともあると思いますが、どんなふうに進めてらっしゃるのですか?
竹内 そうですね。営業と生産は考え方に相反するところがあるものです。
営業は顧客要望を優先して要望通り実現したいと考えますし、生産側は極力工場を効率良く稼働させたいと考えます。
とはいえ顧客あっての商売なので十分に顧客に満足してもらいつつ、できる事できない事を整理する必要があるので、工場だけでなく品証・品管・開発部門、時には設備部門も含めて会社全体で顧客要望を満たしつつ、効率よく生産できる供給体制を構築できるよう調整します。
ギクシャクする時もあるのですが、そこをポジティブに変えていくために、こうしたら計画が実行できるという落とし込みを両者の間に入ってやっていくのが私達の仕事ですね。
――それは大変ですね。他にはどんな苦労がありましたか?
竹内 私は他の会社から転職してきたのですが、前任の方から引き継ぎの時に言われたのが「KKD」でした。
経験と勘と度胸です(笑)。
前任の方はキャリアが長くて商品知識があったのでまさに経験と勘でわかる人だったのですが、私は新人同然なので商品構成もわからない。
商品には全て商品コードが付与されているのですが、引き継いだ生産計画データには商品名ではなく顧客名や略称で記載されているデータもあって、最初はそれがどの商品を指しているかを把握するのに苦労しました。
私は常に営業、製造両部門とコミュニケーションを取ることを意識しています。
現場は営業から言われた計画をひたすらやればいいという考えではついてこない。
将来的なビジョンや営業が持っている他の情報が欲しいのです。
なぜ今忙しいのか、それはなんのためなのか、大体の見通しを共有すると現場はそれだけで安心するし、協力してもらえることもあります。
現場の責任者もなんで忙しいのかわからないと従業員に説明できないので、大変なのです。
ただ「売れるものを作る」だけではダメで、生産現場をうまく紐づけて工場との信頼関係を作っていくことはとても大事です。
――お互いに風通しをよくすることで相乗効果を生み出すことができるのですね。
そのためにはKKDだけでなく、データや情報が必要だったということですね。
竹内 そうですね。
データを基にした仕事の平準化ができることも働く側のメリットになります。
忙しい時期を見越して業務負荷を調整したりもできますから。
そこで使用している生産管理ツールの1つが Microsoft Dynamics AXでした。
2015年から使用を開始していましたが、保守が切れるタイミングでMicrosoft Dynamics365に切り替える決断をしました。
使う人のストレスを無くすことで業務をよりスムーズに
――Microsoft Dynamics AXの保守が切れる際にKISにご縁をいただいていますね。
2023年7月から打ち合わせを開始して2024年4月にリリースでした。
竹内 はい。他のパッケージソフトも検討したのですが、既存システムとなるべく同じように使いたいという結論に至りました。
新しいシステムに合わせてコード体系など作り直すのは相当の労力がいるし、現場担当者への入力指導の煩雑さも考慮し、既存のMicrosoft Dynamics AXと同様の使い方ができるMicrosoft Dynamics365を選択しました。
システム導入の際に気を付けなければならないのは安定してミスのない入力業務ができることです。
工場の入力者が必ずしもパソコン業務に慣れているとは限らないので、まったく違うシステムを導入する際には少なからず混乱が生じます。
現場作業員が日報作成に使っているシステムなので、できるだけ負担にならないように進めたかったのです。
そこにテコ入れをしてくれたのがKISさんでした。
前のシステムデータの不具合まで直してくれて、本当に感謝しかないです(笑)。
今までと変わりなく、問題なく使えています。
――KISとは初めてのお仕事でしたが、やりにくいことはありませんでしたか?
竹内 なんでも相談しやすかったです。
正直、最初は不安もありましたが、業務内容を拝見した時点で大丈夫だろうと思っていました。
そして実際に導入が始まったら、トラブルがあっても電話したら翌日には東京から長野まで駆けつけてくれましたし、フットワーク軽く、コミュニケーションが密でとてもよかったです。
言えばなんでもやってくれるし、任せておけばその通りにやってくれるので安心できました(笑)。
――ありがとうございます。
タイトなスケジュールだったと聞きましたが、大変ではなかったですか?
竹内 タイトなスケジュールではありましたが、0からパッケージソフトを導入することを考えたら比較にならないくらいの少ない労力ですよ。
待ち時間もほとんどなく、連携よく進められたので半年でリリースできたのだと思います。
スケジュール通りです。
リリース後も大きなトラブルはないですし、不具合があってもすぐに修正してくれるので助かっています。
――阿部さんは管理栄養士として商品開発部でお仕事されていたのですが、
リリースの頃に生産業務部に異動されたのでしたね。
阿部 はい。商品開発部では違うシステムを使っているので、異動後に初めてこの日報システムを知りました。
私は実働に向けての確認作業から関わったので、試験運用と導入で初めてKISさんにお会いしました。
4月からは問い合わせ対応でマニュアルを見ながら毎日焦っていました(笑)。
先輩おふたりと3人で対応しながらわからないことはKISさんに問い合わせをしていましたが、すぐに対応していただけて助かりました。
――使われている方に説明されるなど直接お話を聞くことが多いそうですが、
みなさんの反応はいかがでしたか?
阿部 新しいシステムは旧システムと基本的な使い方は変わらないのですが、見た目が変わったので、最初は現場の方は戸惑っていましたね。
――どんなお困りごとがありましたか?
阿部 転記ができない、入力がわからない、など基本的な操作です。
導入から3日間はあちこちの工場へ行って対応していました。
初期設定をするのが大変でしたね。
4月はバタバタしましたがその後は大体落ち着きました。
今は平常運転で、問い合わせは1週間に2−3件あるかないかくらいです。
私自身がこのシステムに慣れるところから始めたので、KISさんに相談しながら一緒に乗り越えてきた感じですね。
――それはよかったです。
さらに事業が拡大していくと竹内さんが休めなくなってしまいますが、
今後はどのような目標をお持ちなのでしょうか?
竹内 そうなんですよね(笑)。
現在の生産計画が属人的な作り方となっている点が今後の事業拡大にはリスクになると考えています。
各担当者の能力によって計画の品質が左右される状況は望ましくなく、担当者が変わったからといって生産計画に影響が出ることは避けなければなりません。
当社が安定的に事業拡大を続けていくためには、属人的な能力を活かしたbestな計画ではなく、誰が作っても一定の計画品質を維持できる均一化であり、標準化によってシステムで機械的に計画を作ってそこに少しテコ入れするのが理想的だと考えています。
弊社は一気に規模が大きくなってきたので細かいところでまだ修正点が多いのが現状です。
仕組み作りから製造原価の考え方、情報の取り方、計算方法、取りまとめなど、昔はマッチしていたけど現状にそぐわないところがあれば改善していかないといけないし、改善するには根拠を以て統制を取っていかないといけない。
明確でない部分は明確にしないといけない。
データを活用しながら、統制が取れた考え方で進めていけたらと思っています。
会社の規模が大きくなり、遠隔地に工場を持ったりするようになると、情報の統制が取れている体制は大事になってきますからね。
私は「穴は伸び代」だと考えています。
不足している部分があるということは、まだまだ成長の余地がある事だと思っていますので。
今はいろんなところに意味を持たせないといけない時代です。
弊社は人手不足も問題になっていて、従業員にお子さんが産まれて育児の為に退職されることも多かったので、それを改善するために敷地内に保育園を設置しました。
従業員や地域のお子さんを0~2歳児まで受け入れて、育児休業後の復職時に仕事と育児の両立がスムーズにできるよう、子育て支援に力を入れています。
男性にも女性にも働きやすい環境になっているので、子育てしながら仕事をするにはよいところだと思いますよ。
<KIS’s eye>
今回のプロジェクトは半年という短い期間での導入となりましたが、みすずコーポレーション様の協力もあり非常にスムーズに本番稼働を迎えることができました。
お互い協力しあいながら導入できたことを心より感謝しております。
またみすずコーポレーション様は大豆加工食品におけるリーディングブランドとして、新工場の稼働や海外展開を視野にどんどんと成長を遂げられています。
それを推し進めるためにも今回のシステムの新工場展開や、他の業務領域にも利用拡大できるように今後もKISがサポートさせていただきます。
(左から)営業:小田 晴生、PM:白鷹 昌明
ソリューションの詳細はこちら→製造業向けERPパッケージ 「Microsoft Dynamics 365」
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会社DATA
株式会社みすずコーポレーション
https://www.misuzu-co.co.jp/
【本社】〒380-0928 長野県長野市若里1606