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MES・MCSを止めない ― 半導体工場の生産影響を最小限に抑えるリリースの考え方

半導体工場において、MESMCSは単なる業務システムではありません。

生産実績の管理、工程制御、装置や搬送との連携など、工場全体の判断と動作を支える中枢的な存在です。


前工程・後工程を問わず、MESやMCSが停止すれば、生産そのものが止まってしまいます。

このような特性を踏まえ、私たちはシステム開発において「生産影響を最小限に抑えるリリース」を最重要テーマの一つとして取り組んでいます。

MESMCSのリリースは単なるIT作業ではなく、生産そのものに影響を与えるイベントだからです。

MESMCSが停止すると、工場では何が起きるのか

MESMCSの停止は「システムが使えない」という状態にとどまりません。

実績が取得できず、ロットの状態が把握できず、装置や搬送の判断ができなくなり、工場は一気に見えない状態になります。

前工程におけるMESMCSの停止は「品質に直接影響するリスク」であり、後工程においては「人と情報のズレを生み、結果として納期や信用に影響するリスク」となります。

工程特性は異なりますが、共通して言えるのは止めてから考える】ことが許されない点において、MES・MCSを止めないリリースが不可欠であるということです。

さらに、もし停止してしまった場合の復旧作業も容易ではありません。

欠損した実績データの整合、トレーサビリティの補完、現場への説明など、復旧後も長期にわたって負荷が残るケースが多くあります。

MES・MCSの停止は、生産・品質・納期すべてに影響する重大な事象なのです。

リリースを「生産イベント」として捉える

こうした影響を避けるため、私たちはリリースをIT作業ではなく「生産イベント」として捉えています。

リリースによってどの工程に、どのタイミングで、どのような影響が出るのかを、生産の視点で整理することが重要です。

前工程と後工程では工程特性もリスクの出方も異なります。

その違いを理解したうえで切替方法を設計し、現場と共通認識を持つことが、安定したリリースにつながります。

また、重要なのは「止めないこと」だけではありません。

問題が起きた際に、すぐに戻せる状態を確保しておくことです。

そのため、リリースは常にロールバックを前提に計画します。

切替手順と同じレベルで、戻し手順を具体的に定義することが、現場の安心感につながります。

生産影響を抑えるためのリリース方法

MESMCSのリリースには、いくつかの方法がありますが、実運用において主流となるのは以下の2つのアプローチです。

1.オンライン(無停止)リリース

・システムを停止せずに切り替えるリリース方法

・生産影響を最小限に抑えられるメリットがある

・設計段階から影響範囲を分離し、十分な事前検証を行うことが不可欠

2.短時間停止リリース

・停止時間を最小限に抑えたリリース方法

・生産ロスを限定した切替が可能

・年末年始などの稼働停止期間や工程切替タイミングを活用

現場の稼働状況に合わせてリリース方法を選択することが、結果として安全性を高めます。

リリース設計で想定外に備えておく

リリースに「絶対の成功」はありません。

テスト環境では問題がなくても、本番環境で想定外のエラーが発生することは珍しくありません。

過去の現場では、リリース後に異常が発生した際、強引に進めるのではなく、速やかに切り戻しを実施し、再度仕切り直す判断が行われてきました。

直前まで正常稼働していた状態に戻すことで、影響範囲を最小限に抑えることができます。

重要なのは、失敗しないことではなく、失敗したときに被害を広げないことです。

そのために、限定的な範囲で再リリースや切り戻しを行える設計と手順を用意し、リリース後はログ監視を強化して初期異常を早期に検知します。

リリース後こそが本当のスタート

リリースが完了しても、それで終わりではありません。

初期稼働期間は、実績が正しく取得できているか、搬送や作業指示に滞りがないかを重点的に確認します。

リリース後の数時間から数日間は、安定稼働に向けた最も重要な期間です。

現場と連携しながら、違和感の兆候を見逃さず、必要に応じて即座に対応できる体制を整えることが、結果として生産への影響を最小限に抑えることにつながります。

おわりに

繰り返しとなってしまいますが、MESMCSは工場全体を動かす司令塔です。

そのリリースには、技術力だけでなく工程理解と現場目線が欠かせません。

私たちは、システムを更新すること自体を目的とせず、生産を止めずに工場を進化させることを最優先に考えています。

これからも現場に寄り添いながら、安全で確実なシステムリリースを積み重ねていきます。

KISは長年にわたり半導体業界のお客様に寄り添い、様々なシステム開発に携わってきました。

MES・MCSの導入検討からシステム開発、リリース後の運用までトータルサポートし、継続的な改善をご支援いたします。

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