CASE

導入事例

釣仲間から始まった新規事業が、熊本県との協働で産学官連携事業に拡大中

リーマンショック、外国人労働者の受け入れ、困った時にこそチャンスがある

株式会社村田産業は半導体部品やLED照明の製造を行っている会社で、あさぎり町の本社の他、熊本と鹿児島に4つの工場があり、ベトナムからの人材を多く採用しています。

村田産業がLED照明の製造販売を始めたのは2008年。リーマンショックで経済の動向が大きく変わっている中の新規事業立ち上げでした。
翌2009年にはKISのシステムを導入して製造ラインを増やし、さらに2010年にはKISがLEDの販売を始めるといった具合に、一緒に変革期を乗り越えてきた仲間でもあります。

海外からの労働力がますます必要になってきた今、村田産業とKISはベトナム語と日本語で同時に使用できる多言語仕様書管理システムを共同で開発し、汎用性の高いシステムとして他社も利用できるように開発してきました。

実はこの事業、釣り仲間として出会った2人のパートナーシップから生まれたものだったんです。株式会社村田産業、GMT協同組合の島巻弘充さんにKISとの出会いから今までについてお話を伺いました。

同じような汎用性のある問題解決が

島巻弘充さん(左から3人目)と松井孝嘉(左から2人目)の打ち合わせ。
アットホームな雰囲気の中で本音が飛び出す。

――島巻さんと松井さんは長年の釣り仲間だそうですね。
       そこからビジネスパートナーとしてのお付き合いが始まったのはいつからでしたか?

島巻「松井さんと最初にあったのは私が企画していたフライフィッシングのイベントでしたね」

松井「そうそう。僕がイベント会場に財布を忘れてね(笑)。それで連絡を取ったのが始まり。島巻さんはフライフィッシングの世界では有名な人なんですよ。僕も釣り好きで、川辺川はもちろん、一緒にアメリカにも釣りに行きましたね」

島巻「そうでしたね(笑)。村田産業はリーマンショックの後にLED事業を立ち上げたんですが、その時に仕事で関わるようになりました」

松井「在庫管理、ロット生産工程管理のシステムを導入してもらって、 その後KISはスマートファクトリーソリューション事業の立ち上げなど、 IoTを活用した工場の生産管理や効率アップを目的にしたシステムづくりに力を入れていったんですが、村田産業さんの方ではベトナムからの人材採用が増えていたんですね」

島巻「そうなんですよ。なので、日本語が十分に理解できない人達にいかに安全に働いてもらうかが大きな課題になっていました。それで、KISと打ち合わせをしている時に、設備稼働管理の導入と合わせて、多言語仕様書管理システムを開発してタブレットでベトナム語と日本語の両方が見られるようにするという案が出てきたんです」

松井「KISも県の地域経済牽引事業として認められたところで、 地元企業と協力して汎用性の高いシステムモデルを作って欲しいと提案されていたんですよ。なので、一緒に取り組むことにしたんです」

島巻「外国人材に頼っているのは大手から仕事を受けている中小企業です。海外からの人材の場合、オペレーターは3年で入れ替わるので、 新しい人にゼロから教えていかないといけないんですが、 言葉がわからないと時間がかかる。村田産業は通訳も翻訳者もいるので現場は充実していましたが、通訳者がいない企業が9割。マニュアルを作るにも翻訳は高いので依頼しにくい。だからこれは有効なシステムだと思ったんです」

――導入してどんな効果がありましたか?

島巻「スタート直後は真っ先に安全上問題が起きない教育と品質問題を起こさない教育に力を入れるのですが、3ヶ月かかっていたのが1ヶ月でできるようになりました。電子部品の専門用語をベトナム語に翻訳してあるので、日本語は十分わからなくても母国語で理解できますからね」

――大きな変革だったんですね。汎用性の高いシステムモデルを作るという目的でしたが、現在どのように進めているんですか?

島巻「私は村田産業を定年で退職して、現在はGMT協同組合という会社で 中小企業に向けた外国人労働者の登録、サポートをしています。組合員になると技能実習生を受け入れられる仕組みになっていて、組合員の中から多言語仕様書システムを導入したいという企業も出てきていますよ。外国人材の受け入れは、企業の持っている仕様書、手順書、スペックをどこまでお金をかけて翻訳するかが鍵ですが、翻訳・通訳は専門的な製造業の手順書を理解している人でないと精度が伴わないので、お金がかかるんですよね。なので、村田産業モデルをベースにしたシステムをサブスクリプションでやっていけばコストが安くなり、通訳翻訳者を採用できない会社でも利用者が増えると思います。翻訳が必要な場合は、ベトナム語に関しては、村田産業は10数年受け入れてきた実績があり、取引先の大企業のお墨付きもあるので、それを活用すればよいと思っています」

松井「地域牽引事業はKISだけではなく、中小製造業で産学官連携の効果を出すという県の狙いがありました。モデル工場の村田産業とKISが生み出したシステムを利用して他の事業者ともメリットを共有できるようになったら、 県内の製造業全体を後押しすることができると期待しています」

KIS’s eye

多言語仕様書管理システムは、実際に現場でベトナムの人に使ってもらってフィードバックをもらいながら改良を重ねました。また、多言語仕様書管理システムだけでは解決できない課題については環境改善も行っています。例えば、シグナルタワーにフォトセンサーをつけて稼働管理をできるようにして装置が動いているか止まっているかを視覚的に管理できるようにしたり、確認作業の後に作業者がボタンを押すことで、不明確だった作業者の作業時間を見える化したことなどです。これからも現場の人達が働きやすくなるよう、コミュニケーションを重ねながら、より現場に即したものを作っていきたいと思っています。
<SE 菰田 景氏>

 

企業DATA

株式会社村田産業様
〒868-0431 熊本県球磨郡あさぎり町岡原北109

もともと中学校だった校舎を再利用した素敵な工場です。

 

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